『三国志 きらめく群像』 高島俊男
『魏志倭人伝』 というと 邪馬台国のことが書いてあることで有名なのだが 受験参考書なんかを見ると
「『魏志倭人伝』などという書物は存在せず 本当は 『三国志』の中の 東夷伝 倭人の条に邪馬台国の事が触れられているのである」
と 偉そうに述べられているので こっちも ひとつ偉くなったような気がしたもんだ
しかし もっと厳密に言うならば 「魏書」「呉書」「蜀書」をひっくるめて「三国志」と呼び その中の 「烏丸鮮卑東夷伝」のドンジリに 日本の事が書いてある のだそうだ
知らんかったぁ
東夷の中でも 極東日本
嗚呼 なんとちっぽけな存在だったのだろうか
それが 今や中国に まともにデモやなんかで バッシングされる 大きな存在に成長したのである
現在 三国志関連の書物は ごまんと出ているそうだ
その中で この本 『三国志 きらめく群像』という あまりパッとせん題名の本が 手に取られる可能性は どのぐらいあるんだろうか
しかし この本は 自分の中では 面白さにおいて 群を抜いている
いわゆる人物小辞典みたいな構成なのだが ひとりの人物に対して 複数の原典をあたって かつ それを比較検討しているのである
ゆえに 純然たる 大衆娯楽小説である『三国志演義』を下敷きにした小説(たとえば 吉川英治の三国志)は元より 正史『三国志』を 元ネタにしたものなどに出てくる人物像ともまた違う 生の原石みたいな人物像が浮き上がってくる
自分としては 面白おかしく脚色されたような物語より そっちのほうが 断然面白い
なお 『三国志演義』 正史『三国志』関連の基礎知識が満載なので これから三国志の本を 何か読もうか とお考えの方には まず この本を読むと 余計な迷宮に迷い込まないですむだろう