生まれて初めて、ライブに行ったのは、世間一般から言うと、たぶん非常に遅く、24歳ぐらいの時だった。
足利の「屋根裏」というジャズ喫茶音符に、エルビン・ジョーンズが来たのだ。
エルビン・ジョーンズとは、ジャズの巨人(読売とちゃうで)ジョン・コルトレーンが、最強のコンボを組んでいた時の怪物ドラマーで、若くしてすでに、レジェンド(伝説)であった。

ライブの楽しさに、味をしめたわたしは、続いて、同じ「屋根裏」で、板橋文夫(ピアノ)トリオを聴きに行った。
足利出身という、彼の曲「わたらせ」が、演奏された時は、水面を、輝く光で満たされ、滔々と流れる渡良瀬川の情景が浮かび上がり、即興音楽の持つ表現力の豊かさに、驚かされたものだ。
彼は、同時に、ワンセットが終わった時に、ピアノのワイヤーを一本切っていた、という、剛腕ピアニストでもあった。

中島さんは、かつて、その板橋文夫に師事しており、新宿のピツトインなどで演奏活動を続け、エルビンとも、一杯飲んだこともある、という。

そんなわけで、以前、わたしの行っているスポーツクラブの会員で、入会するや、猛烈な勢いで、バタフライまで、マスターしてしまった中島さんのピアノ・プレイに、興味があったのだ。

子育てなどで、離れていたライブ活動を、また再開することとなり、その一発目が、今回の国立でのライブだそうな。

で、ガチ・エイジを誘い、いそいそと出かけたのだった。

メンバーがすごい。

   中島久恵(ピアノ)
   是安則克(ベース)   
   ツノ犬(ドラムス)


是安則克といい、ツノ犬といい、あちこちのCDで名前を見かける。
各方面で、非常に信頼されているミュージシャンなのだ。

是安則克は、見た感じが学者のような風貌。
アコースティックのベーシストって、インテリな感じの人が多くないか?
バール・フィリップスとか、ジャン・ジャック・アブニルとか、チャーリー・へイデンとか、ゲイリー・ピーコックとか、チャーリー・ミンガス汗・・・ちょっと違うか・・・。

つの犬は、あの、つのだひろの甥っ子、であるとともに、つのだじろうの甥っ子でもあるそうだ。
どうりで、プレイの最中、背後にうしろの百太郎がいたわけだ。

曲は、すべて、中島さんのオリジナル。
演奏は、緩急自在で、長く聴いていても、決して飽きない。
アンコールは、すごくシンプルなメロディーのリフレインに、ベースラインが絡む。マイルスデイビスの「ネフィリティティー」の中の曲みたい(ただし、日本のジャズ特有の情感あり)に、同じフレイズが、繰り返される。
でも、ずっと聴いてられる。

三人の交感がすばらしい。

是安さんは、お帰り、と言わんばかりに、暖かく寄り添っている感じだし、つの犬さんは、やんちゃをするスキをうかがっているみたいで、ここぞ、というところで、ターボをかけまくる。

でも、あとで知ったところによると、リハの時は優しいのに、いざ本番になると、自分のペースに巻き込もうとするらしい。

そのあたりまで読めれば、ジャズのライブはもっと面白いんだな。

あと、もうひとつ

今回の聴衆の中で、おれとガチが、ぶっちぎりで下品な客だったので、われわれぐらいが標準であれば、もっと、会場の空気がディープでジャジーになっただろうけどなぁ・・・。
いや・・・、バラ族でサムソンな雰囲気ではないよ。決して。